1−3 双極性障害は異常ではない:あなたは最低4人いる

 双極性障害はハイになる躁状態と反動のローなうつ状態が交互に波のようにやってくる病気です。この波を抑えて穏やかにしようというのが、薬物療法です。

 念のため双極性障害の定義をネットから引用します。
 読み飛ばして良いですよ。

『双極性障害(躁うつ病)は、躁状態(気分の高揚・活力および活動性の増加・睡眠欲求の低下)とうつ状態(抑うつ気分・気分の低下・活力および活動性の減少)のエピソードが反復するもので、軽躁で数日間、躁状態で1週間異常、うつ状態は2週間以上続く。明らかな躁状態は浪費や誇大的な言動が認められて、自他共に気づきやすいが、軽躁状態は「調子が良い。」と自覚され、見逃される事が少なくない。』
 ――NCNP病院国立精神・神経医療研究センターから引用

 その薬物療法に加え、私は少し双極性障害への捉え方やアプローチが違っています。「メタ認知の強化」を意識するということです。

 なぜその話に行き着くのか。その話を今日は聞いてもらいたい。

 皆様に知ってもらいたい症例があります。

 これは精神障害であってもなくても、読者様でも書き手様でも知っておいて損のない。分離脳患者の症例です。
 分離脳の手術では脳梁が切断されます。カリフォルニア大学のガザニガが実験を行った分離脳患者のなかに、右脳に言語能力を持つ男性がいました。単語や短いフレーズの理解だけではなく、言葉を使って返答することもでました。そこでキーワードを抜いたフレーズや質問を被験者に聞かせ、キーワードだけは視覚的に示す方法をとり実験を行います、その話を今から引用します。

”もっと顕著な違いが現れたのは、野心についてたずねた時である。

「卒業したら何をしたいですか?」

 この質問に対して、優位な左脳は「製図工になりたい。そのための勉強もしている」と答えた。

「……したら何をしたいですか?」

 今度は「卒業」という言葉だけ、スクリーンで一瞬写し出した。被験者の左手が、スクラブルの駒を並べはじめる。こうしてできあがった答えには、実験者はもちろん、本人も驚いた。そこには「カー・レーサー」という言葉が記されていたのだ。”

(リタ・カーター,2013 養老訳,原書房,p.72-73)『新・脳と心の地形図』より
※孫引き
Joseph LeDoux,DH.Wilson and Michael Gazzaniga,’Adivided mind’,Annals of Neurology,2(1977),417-21

 人間は右脳優位の人格と左脳優位の人格が最低2人います。これは紛れもない事実です。また、ソースを失念してしまいましたが、多重人格者のある人格を異常だ、その人格を捨てなさいと否定し続けていくと自殺するといった話もあります。あなたは左脳優位の自分と右脳優位の自分どちらが自分ですか? ……どちらも自分ですよね。

 では、双極性障害はどうなのでしょうか。双極性障害は躁状態が右脳優位。うつ状態が左脳優位の人格が表層に強く出てきているだけの状態だと私は考えています。

 双極性障害は躁状態もうつ状態も異常ではありません。
 どちらも切り捨てないで下さい。おかしくなります。

 さて、だったら双極性障害はなぜ障害なのかという話となります。私は先ほど最低2人のあなたがいますという話をしました。ここからは体験談なのですが、躁うつ病なのにうつ病治療を行い精神が崩壊していた時の話です。頭の中の人格が分裂したかのように対話しだした時、言い争う2人の自分とそれを調停する自分そして奥に深淵にもう1人いました。論拠を持ってくることもできそうですが、エッセイなので現時点でしません。ただ、似たような主張や学術的な裏付けはちらほら見かけるので目新しいことではありません。問題はこういうことが知れ渡ってないことなのですが、それも置いておきましょう。

 では自分と言うのは何なのか。

 それは、左脳優位の人格と右脳優位の人格を統合する人格それがあなたです。そう「メタ認知」です。人格を客観化しそれをコントロールする自分こそが自分という人格なのです。

 ですので、私は双極性障害を「メタ認知」である統合する自分が弱っている状態のことを指すと考えています。

 ここで残念なお知らせです。

 自己実現や自分探しといった行為は超絶難易度であることをお知らせします。

 そしてここまで来たら言ってしまいましょう。奥にいる深淵にいる4番目の人格は原始的な自分となります。Yes/Noを決める役割。闘争/逃走反応。行くか行かないべきか。やるかやらないべきか。onかoffかそういった機構の人格があります。

 さて、ここで仮説です。誰がその4番目の人格に命令を下すのですか? 外部環境からの知覚に反応しているだけ? もし、それを命令する存在があるとするなら……それは5番目の人格となるでしょう。それは恐らく、遺伝的自己、あるいはもし高次元の存在から受信する機構が人間に備わっているとしたら……昔調べた時には第三脳室の空間が何をするところか分かっていないらしいですよ……そんなSFチックなノリで終わりたいと思います。

 今日のおさらい。

 あなたは1人ではない。というか最低でも4人いる。

 どれも大切なあなた。

 人格を表すとしたら右脳優位の人格と左脳優位の人格を統合している「メタ認知」の機能を有する人格である。

 双極性障害は躁状態や鬱状態の異常というより、「メタ認知」の機能をもつ人格が弱まっているだけの状態という見方もできるのではないか。

 「メタ認知」を強く意識して、強化していくことの先に双極性障害の幸せがあるのではないでしょうか。

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